ランドスケープ設計
“ 景観デザインにおけるオオバらしさとは ”
柏の葉アーバンデザインセンター・副センター長
三牧 浩也 氏
2010年に柏の葉アーバンデザインセンター・副センター長に就任以来、公・民・学の連携に向けて統括・調整し、柏の葉アクアテラス(北部中央二号調整池)の高質化を初めとする、つくばエクスプレス・柏の葉キャンパス駅周辺のまちづくりを推進してきたのが三牧浩也氏である。同氏から見たオオバの姿とはどのようなものだったのかお話を伺った。
※記事中の所属・役職は取材当時(2022年12月)のものです。
柏の葉アクアテラスの高質化事業では、日建設計がランドスケープを担当し、オオバがその技術的検討を行ったが、設計計画段階は課題山積で、激論に次ぐ激論の日々だった。
「アクアテラスに関しては、千葉県が施工する調整池整備と一体で高質化工事を実施する必要があったことから、我々サイドは、高質化のためのデザインをどうするのか、(完成後の)安全管理はどうするのかを同時併行で迅速に決定していく必要がありました。たとえば、デザインに関して、『こういう設えにしよう』と決めても『安全管理上、問題がある』となれば、デザインを再考することになり千葉県側の工期にも悪影響を及ぼすことになります。しかも同時にコスト管理もしていかなければなりません。時間的に切迫する緊張の中、毎日がお祭り状態でした(笑)。
そうした日々にあって印象的だったのがオオバさん(以下、オオバ)の“迅速な対応力”です。会議の中で新たな課題が出てくるや、『これは、こういう構造で…』『こうすれば何とかなるんじゃないか』とダイレクトな解決策をその場でどんどん出してくださるのです。お陰で安心感を持ってスピーディに進めることができ、無事、短期だったのにも関わらず工期内に業務を完遂することができました」。
この高質化事業は、本来の治水機能を前提としつつ、生態系を維持する空間と、人々が水に親しめる日常空間を創出した。結果、柏の葉アクアテラスは、数々の賞を受賞するなど社会的に高い評価を得る一方、地元の方々からも愛される存在となった。それは寄せられる“ご意見”にも明らかだ。
「葦などが生える場として残した水辺の生態空間は、定期的に刈り込むんですが、刈り込みの時期を少しだけ早めにした年には、『鳥の雛がちょうど孵る時期で、あと半月刈り込みを遅らせれば雛が巣立つので、それまで刈り込みを待ってあげるといいよ』と、アクアテラスに起きることを自分事として捉えたアドバイスを頂いたりしました。地元の方々から寄せられるご意見は、実はこうした“愛のある苦情”と呼べるものが大半なのです」。
柏の葉アクアテラスが末永く人々から愛され続けるために、安全管理は欠くことのできないものであり、その点で当社が果たしてきた役割は大きい。そしてそれは今後も変わることがない。
「完成後は想定外の問題がいくつか発生しました。一つ目は、水辺の散策路に一部水が滞留し、冬場に凍ったり、夏場には苔が生えたりして“滑る”という問題。二つ目は、法面(のりめん)から水が滲み出してくる“絞り水”の問題です。いずれもやってみないとわからない問題でしたが、オオバが的確な追工事設計で解決してくださいました。
まちづくり全体のことをわかっていながら、同時に、詳細な部分の設計に関わる議論もできる、そういう“守備範囲の広さ”がオオバらしさだと私は感じています。また、『こういうまちをつくろう』という価値観を共有でき、激論を交わしつつも一緒に楽しめる事業パートナー、それが株式會社オオバという会社ではないでしょうか」。